毎年7月1日時点での全国の土地の価格を調べる「都道府県地価調査」の結果が公表され、全国平均の地価は去年に比べてプラス1.5%と、4年連続で上昇しました。国土交通省がまとめた2万1400余りの地点の結果によると、東京圏や大阪圏での伸びが一段と拡大する中、地方都市や観光地でも上昇傾向が続いています。ここでは、地価上昇の背景にある要因と、今後の見通しについて詳しく解説します。
地価上昇を牽引する3つの要因
地価上昇の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
- インバウンドと観光需要の活況
北海道の富良野や沖縄県の宮古島、恩納村といったリゾート地では、海外からの観光客増加を背景に、別荘やコンドミニアム向けの土地の取引が活発になっています。この観光需要が地価を大きく押し上げています。 - 都心への集中と住宅需要の堅調
利便性の高い地域を中心に住宅需要が堅調に推移しており、特に「東京圏」ではプラス3.9%、「大阪圏」ではプラス2.2%と、伸び率が一段と拡大しました。都心での住宅価格高騰を受け、新幹線通勤圏である愛知県豊橋市など、地方都市でも都心への通勤需要が生まれています。 - 海外からの投資資金の流入
日本の不動産価格は海外と比較して割安だという見方があり、外国人投資家によるマンション投資や移住のための住宅購入が増加しています。特に福岡市などでは、外国人の不動産購入が地価上昇を後押しする要因の一つとなっています。
注目すべき「価格高騰」の事例
地価の上昇は、特定の地域や物件で顕著に現れています。
- 地方都市での地価上昇
・北海道富良野市: 住宅地で最も上昇率が高かったのは、インバウンド客に人気の富良野市で、27.1%の上昇を記録しました。
・北海道千歳市: 先端半導体工場の建設に伴い、従業員向けの住宅需要が高まり、地価が大きく上昇しています。 - 都心中古マンション市場の活況
・不動産調査会社「東京カンテイ」の調査では、東京23区の中古マンション(70平方メートル)の価格が3ヶ月連続で1億円を超えています。
・築26年の新宿区の中古マンションが、新築時の約1.8倍の価格で取引されるなど、新築だけでなく中古物件の価格も上昇しています。
今後の見通しと、直面する課題
今後の地価は、インバウンド需要や住宅需要に支えられ、上昇基調が続くものと見られます。一方で、この状況はいくつかの課題も引き起こしています。
- 住宅価格高騰による影響
地価上昇により、一般の世帯にとって「手が届かない」と感じる住宅が増え、マンションなどの購入を諦める人が出てきています。 - 地域ごとの二極化
札幌・仙台・広島・福岡といった地方主要都市では地価が上昇している一方で、人口減少や高齢化が進む地域では、地価の下落傾向が続いており、地域間での二極化が顕著になっています。 - 商業地の上昇
商業地も全国平均でプラス2.8%と上昇しており、特に観光地ではホテルの建設や飲食店の出店が相次いでいます。これは、オフィス需要の堅調さも背景にあります。
地価上昇の背景には、経済の活況や需要の増加がありますが、同時に住宅取得を困難にする側面もあります。今後の市場動向を注視し、戦略的な判断が求められるでしょう。